韻とアイデアほか

日本語の押韻などに関する走り書きetc...

【翻訳練習】Madvillain - Rhinestone Cowboy

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Madvillain - Rhinestone Cowboy

 

 名盤『Madvillainy』、珠玉の21曲をつらね、そのラストを飾る曲は...なんとアルバムのリークに対する復讐劇でした!

 

 実はこの名盤がリリースされる一年前、なんと何者かが彼らのデモテープを盗み、黎明期のインターネット上に音源を流出させたそうです...ペンの太字で背面にトラックリストが書かれたテープケースの画像とともに。事件はDOOMMadlib、そしてStones Throwを落胆させました。

 その実際のデモデータがYou Tubeに載ってたので以下に貼っておきます。

 

 

 大きく違うのは4曲目のFigaroのデモ音源から。まずDOOMのラップのトーンがオフィシャルのものと全く違う、声の高いフロウになってます。そして例の"Figaro,Figaro"以降のバースが存在しないのです。実はその部分はリーク音源との違いを生むために書き足されたものだったんですね。

 このような具合に、リークされた音源は大部分で修正や加筆がされており、想定されていた曲順も大きく変更されているのが確認できます。『Fancy Clown』のアウトロでDOOMとViktor Vaughnが喧嘩しているくだりが挿入されてるのが面白い。曲順も『All Caps』が最後に配置されてる辺り、このタイトルはやはり"完了"を意味していたんだなとわかります。

 

 このテープにはどうやら『Raid』『Curls』『Accordion』などが収録されてない様子なのですが、もしリーク事件が無かったらこの名曲たちが存在してなかったと思うと、何やら運命やドラマを感じずにはいられません。

 

 といった感じで、このアルバムは大団円を迎えることになります...最後までお付き合い頂きありがとうございました。これにてMadvillainy完訳シリーズ、完結です。

 

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【翻訳練習】Madvillain - Great Day

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Madvillain - Great Day

 

 日は素晴らしい一日になりそうだな——アルバムのセミファイナルとなる本曲『Great Day』は、ここに来て何やら不穏なフラグを立てて始まります。そして崖に宙ぶらんのまま次回に続くドラマのシーズンエンドのごとく、興奮に意表を突く形でバースは打ち切られてしまいます。

 「一体どうなってしまうんだ!?」といった具合ですね。エンドロールに繋げる、その脚本術とも言えるDOOMのライティング能力には驚かされっぱなしです。

 

 この曲のいくつかの謎なラインについて、実は次の曲で意味が明かされるのですが...ネタバレとなってしまうので本稿では話さないこととします。まあその他にも"ロケット科学者"や"Grind(挽く)"など、別の曲で出た印象的ワードの流用をやったりしているので、意識しながら聴いてみると面白いかもしれません

 

 ワードプレイとして印象的なのは"One thing this party could use is more..."の箇所でしょうか。このラインは直前の脚韻"jaw twitches"から連想するに、ほぼ間違いなく"more bitches"と続くはずなんですが、彼はためらって咳き込んだのち、同じ頭文字"B"の"Booze"に言い換えております。彼女と一緒にドライブしているという設定をうまく利用してますね。

 

 それでは残すとこ1回となったこの完訳シリーズ、最後までお付き合いください。『Great Day』、どうぞ。

 

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【翻訳練習】Madvillain - All Caps

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Madvillain - All Caps

 

 あ残すところ3曲となりました。DOOMMadlibはいったいどうアルバムを締めるんだ...!?といった具合ですが、ひとまずYouTubeで一番伸びてるこの曲の訳を終わらせることにしましょう。

 

 この曲はDOOMによるこれといった特徴のない、ただひたすら格好いいボースト曲...のように最初は思えるのですが、聴いて欲しいのはマッドリブが音を抜いた"五箇所"で彼が言っている単語です。

 この手法はよく他のMCが模倣しているのを聴きますが、あんまり決まってなかったり、そんな深い意味はなかったりします。しかしここでDOOMが披露するそれはちゃんとパンチラインとして機能し、かなりの深い意味を持っていたりします。

 

 まず一つ目、『'Your Majesty'(陛下)』の箇所はドゥーム自身を指すんですが、それ以上にドゥームの名前の元ネタであるアメコミのスーパーヴィラン『Doctor Doom』を意味しているんですね。

 Doctor Doomというのは元祖戦隊モノアメコミ『ファンタスティック・フォー』の一大悪役で、天才頭脳を持つ屈指の科学者にして、ラトヴェリア王朝という国の君主でもあります。君主...つまり"Your Majesty"。

 ここでDOOMは名前の元ネタをそれとなく匂わせることで、原作に敬意を評しているわけですね。

 

 二つ目『kick slow(ゆっくり辞めていく/遅く始める)』は通常だと前者の意味で捉えられるはずなんですが、よく考えると後者の意味をも内包していると気付きます。それはどういうことか...は四つ目の項で説明します。

 

 三つ目"Don't Talk about my mams, yo"(俺のママのことは話すな、おい)は単体でも面白いんですが、そこに被せられる声"You're mother..."がミソです。ここで声はまず間違いなく"motherfucker"(クソ野郎)と続くはずなんですが、これをmotherで食い気味に断ち切ることで、DOOMがママの悪口と勘違いしてる、みたいなギャグに変えてるわけです。いちいちギャグに対する芸が細かい。

 

 そして四つ目『sliced wig(短髪カツラ)』の所で重大なコンセプトが発覚します。ここは単なる韻のためだけの言葉選びかといえばそうではなく、実はこの曲の前に登場する『Viktor Vaughn』のことを指しているのです。そのことはVik名義のアルバムを聞くとよくわかります。

 例えば『Popsnot』という曲の"Y'all better aim for the head. Just don't hit the fitted hat"(お前は顔で選んだほうがいい、ただ密着した帽子には触れるなよ)というラインや、『Raedawn』の"That's is the question. They wonder why he always wear hat in the session"(それこそが問題だ、彼らは不思議がるのさ——セッションにいつも帽子をかぶってくるのを)などなど、ハゲネタを随所に盛り込んでくるんですね。

 

 そして彼のタイムトラベラーという設定が二つ目の『kick slow』、そして四つ目の『con flowin'』(詐欺の段取り)を説明しているわけです。つまり"未来を知っている"Viktor VaughnとDOOMが共謀することで、賭け金を巻き上げることに成功したお前はどちらにせよ遅れることになる、というわけです!

 しかもこれは『Money Folder』の"So raw, break it down and make quadruple(冗談抜きだぜ、分割して4倍にしたのさ"や『Accordion』の"Y2G stee twice to threefold"(2000年/ドルを2から3倍に持ち上げる)などのラインとも対応するわけです...

 これには筆者も呆気に取られましたね。前曲『Fancy Clown』もそうですが、別名義を利用してリリックの内容を深めるなんて、誰が思いつくでしょうか

 

 しかもこの二つの名義は前述したDoctor Doomに関連しており、実のところこのアメコミのヴィラン本名をなんと『Victor Von Doom』というんですね。Vic(k)tor Von(Vaughn)という名前までリファレンスにしているという。

 そしてそのアメコミのリファレンスぶりが、本曲『All Caps』のMVをアメコミ調にし、そしてファンタスティック・フォーの原作者であるSTAN LEEとJACK KIRBYの名を載せている理由なわけです。ご覧の通り...

 

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なんてこった

 

 加えて最後のライン"Madman never go [pop] like snot bubbles"(狂人は"POP(音楽/破裂音)"を鳴らさないのさ——鼻ちょうちんみたいにはな)も前述したVicの曲『Popsnot』を絡めたラインという...要するにこれはDOOM名義とViktor Vaughn名義の融合をコンセプトとした曲だったというわけです。

 All Capsには"全部大文字"という意味もあれば"全てを完成させる" という意味もあるので、この曲でもって一連の種まきの収穫が終わる、ということでしょうね。あの無秩序の数々にオチが付くとは...

 

 ちなみにこの解説はまったくの当てずっぽうという可能性もあります。というのも、参考にしてるRap GeniusではVikの下りが全く触れられてないんですよ!そこのアナタ、貴重ですよこの文章は!

 

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【翻訳練習】Madvillain - Fancy Clown

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Madvillain - Fancy Clown

 

 アルバム『Madvillainy』完訳シリーズも終盤となってきました!相変わらず稚拙ではありますが、最後までお付き合いください。

 

 さてこの17曲目『Fancy Clown』ではDOOMの別名義でありタイムトラベラー(という設定)である謎の男、"Victor Vaughn"が客演に迎えられております。タイトル通り"空想上のピエロ"である彼は、アルバム『Vaudeville Villain』で演じたままのクズ野郎を本曲でも発揮しており、最初は誠実そうでも徐々に馬脚を露わにしてしまう辺りは、名曲『Let Me Watch』を彷彿とさせます。

 このVictor Vaughn名義、ストーリー物なだけあってリリックのクオリティで言えば...なんとMadvillainやソロ名義を凌ぐほど秀逸らしいのです。自分も部分的に訳したことがあるんですが、彼の破綻したライミングそのままにストーリーが語られる様はとても奇妙でした。

 

 もし機会があればこの『Vaudaville Villain』、ぜんぶ訳してみようかななんて思っております。まあそれはともかく、ここではこの稀代のクズ男の長電話にお付き合いください。

 

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【翻訳練習】Madvillain - Strange Ways

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Madvillain - Strange Ways

 

 警察批判をするヒップホップソングは数多いですが、それを戦争と並列し、ダブルミーニングでまとめあげるというのは如何にも彼らしい手口です。これをもっと腰を据えて、言葉遊び抜きにやったのはKiller Mikeの『Reagan』とかになるでしょうか。

 

 この『Strange Ways』は大麻やコカインで金を得るディーラー(あるいはその"疑い"があるというだけの黒人)を撃ち殺し、その財産を奪うというレーガンの『麻薬との戦争』以降の警察の体制を批判しております。Verse1で"Ways"を"道"、2では"手口"という意味に変えて。

 アウトロの失恋模様は、次に続くVictor Vaughn名義の『Fancy Crown』に続きます。

 

 ちょっと意識してほしいのが、この曲が収録されているアルバムのタイトルです。このアルバムの題は『Madvillainy』("狂った悪党的")で、DOOMMadlib扮する悪党たちがしっちゃかめっちゃかやるのが常なのですが...

 DOOMの口からシリアスに語られる内容から推測するに、この曲のみにおいて"Madvillainy"とされる存在、それはまさしく警察なのだなと。そういった意味で、ますますこの曲はコンセプチュアルだなと驚かされます。

 

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【翻訳練習】Madvillain - Hardcore Hastle

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Madvillain - Hardcore Hastle

 

 ッドリブはこのタッグを組む以前にLootpackというグループを組んでおり、本曲はそのMCの片割れであるWildchildのソロが披露されております。『Weededed』『The Anthem』とか、好き者に知られた曲は数知れず...

 

 Wildchildはをレイドバックした風にオフビートでフロウする感じが唯一無二でスゴく好きなんですけど、ソロになって以降はあまり目立たないままフェードアウトしてしまいましたね。カッコイイ曲たくさんあったんですけど...

 この曲はアウトロに性的音声が含まれるのでうかつにスピーカーで再生できないのがヒジョーに悔やまれますね。Maddolibu-san...というわけでR-18、視聴注意です(書いとかないとBANされそうなので一応)。

 フロウ的にもDOOMとタイプが異なるのでリフレッシュにぴったりなんですが...

 

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【翻訳練習】Madvillain - Eye

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Madvillain - Eye

 とビートがひたすらスムースに、高揚感に誘ってくれるエエ曲です。アルバム『Madvillainy』で唯一気持ちを落ち着かせてくれる曲ですね。"ハイ"の意味がどっちなのかとかは聞いてはいけない

 この歌を歌ってる人はStacy Eppsという方らしく、あまり知られた方ではない模様ですが...綺麗!耳元の月型アクセサリーが魔術的でふつくしい.............

 

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