韻とアイデアほか

日本語の押韻などに関する走り書きetc...

【整理】部分倒置をつかって動詞で脚韻をふむ

どうも〜〜Tachibuanaです。今回は前回に引き続き、倒置法を利用して韻をふむ方法を解説したいと思います。前回は目的語(O)で韻をふむのが目標でしたが、今回は動詞(V)による方法です。比較的みじかめなTipsになります。

 

さて前回説明したとおり、日本語の訓読み動詞というのは1語のようでいて、行動と接尾辞による2語で成り立っているといえます。例えば「たべる」でいうなら「たべ(行動)」にたいして接尾辞「る(現在形)」がくっついてくる、という形です。

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おさらい終了。では例の例文を見ていきましょう。

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「わたし は りんご を たべる」

そして今回の目的は「動詞で脚韻を踏む」です。

 

「たべる」が最後にきているからこれでいいじゃ〜ん、と思いがちです。ええ、そのように見えます。ですが、説明したとおり文末にきているのは接尾辞「る(現在形)」のため、厳密に言えば最後にきてるのは接尾辞です。しかも「たべ(行動)」を含めた2語なので、純粋な”1対1の単語韻”になりません。前回のTipsで説明しそびれましたが、「なんで1対1じゃないとダメなの?」と思うでしょう?

 

たとえばの話です。「たべる」という言葉に対して「破滅」という韻を踏んだとしましょう。それぞれの母音を抜き出すと「aeu」で韻を踏んでいることになります。ですがもし前者を「たべた」と過去形で表現したとしたら?

 

ここが問題になります。つまり「差別」で韻をふむ場合、言葉選びは容赦無く「たべ-る(現在形)」に拘束されることになってしまいます。「たべ-よう」でも「たべ-た」でも完全韻(すべての母音がそろった韻)を踏むことはできません。逆に言い換えるなら、たとえ過去形で表現したいのであっても、韻を踏むために無理やり現在形にねじまげなくてはいけない、ということです。

 

韻を踏むという行為をする以上、必然的に「表現のために単語を変える」ということがおこなわれます。ですが目的語による押韻が「モノからモノ」へ単語を変えるのに対して、"接尾辞を含んだ"動詞のばあい、「表現したい意思の方向性そのもの」を変えなければならなくなってしまうのです。

 

そしてこれが「日本語で韻を踏むとダサく聞こえる」原因の一端にもなっているのです!

 

 

それを回避するために、SVO倒置(”たべるよりんご”語順)をもちいることによって、前回は目的語による"単語韻"を成立させることができました。しかしでは、日本語の動詞では単語韻を踏むことはできないのでしょうか?

 

いいえ、できます。

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さてここでいったん思考を整理しましょう。今回の問題は、

  • 動詞に接尾辞がくっついてて、韻をふむシチュエーションが限られてしまう。
  • しかしなんとか動詞を末尾に残したまま韻が踏みたい。

この2つです。では、すべきことはなんでしょう?それはやっかいな接尾辞をどうにかすることです。どうにかってどうするの...ということで、ここから仮定をいくつか立てて、理論を組んでみます。

  1. 「たべ(行動)」と「る(接尾辞)」を切り離せるとする。
  2. そして「る(接尾辞)」を文末から別の位置に倒置できるとする。
  3. 「たべ(行動)」のみで、シチュエーションにしばられず脚韻をふむことができる。

では実践してみましょう。

 

まず1.接尾辞を行動から切り離すです。まず単語「たべる」をみていきましょう。

 

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「たべ-る」です。これをそのまま「たべ」と「る」に切り離してアレコレすればもちろん怪文章ができあがりますが、今回目指すのは「割と日本語として成立してる」文章です。さてどうしましょう?

 

記事の最初の方で言ったように、訓読みの動詞というのは行動と接尾辞がくっついていて、あたかも2語のようにふたつの意味をもっています。

では、実際にふたつの単語に分けたとしたらどうなるでしょう?

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そうです。我々には熟語があるじゃないですか!

たべる、という行為は熟語に置き換えれば食事、あるいは咀嚼ということばを充てることができます。類語辞典なんかを引いてみればもっと別の言葉が見つかるかもしれません。とにかく、"たべるという訓読み""食事/咀嚼という熟語"に置き換えることができるわけです!

 

そもそも我々日本人は中国から漢字を輸入してきて、それを独特なアレンジ、魔改造をほどこして(これを個人的に"茶碗化"と呼んでいるんですが)訓読みやかな文字を開発していったわけです。ですから、さかのぼって訓読みを漢字にすることだって可能なわけですね。ありがたいことに今日、日本語で熟語は廃れていませんから。

 

しかしこの「食事/咀嚼」という言葉は状況や意思の情報を持っていません。過去現在未来、あるいは要望や命令なのかが不明瞭です。そりゃそうです、だって接尾辞を切り離しちゃったんですから。かといって残った接尾辞「る」をそのままアレコレするわけにはいきません。「る」じゃなんの意味もない1文字ですからね。ですからこの「る」を同じ意味の別の言葉に置き換える必要があるわけです。

 

さてこの「る」とは現在形をあらわす接尾辞なわけですが、この現在形とはなんの「現在形」なんでしょう?...言ってしまいましょう。答えは「行動の現在形」です。では行動ってなんでしょう?...行動とは、"する"、ということです。

 

 する。これが行動の現在形です。では過去は?

した。未来なら?

するだろう。要望なら?

したい。命令なら?

しろ。必要なら?

すべき。義務なら?

しなければならない...こうです!

 

動詞とは、行動を表現する言葉に他なりません。ですから訓読み動詞を分解すると行動そのものを表す熟語のほかに、これらの意思や状況をあらわす語形が出現するはずです。もし「たべた」なら「食事した」に、「たべるだろう」なら「食事するだろう」...という具合にです。

 

ではこれを例文に置き換えてみましょう。するとこうなるはずです。

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さあ、後は接尾辞だった「する」を倒置するだけです!ここまできたら楽勝です、ひといきにやってしまいましょう。

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これで完成です。いささか無機質ですので、「するよ」とか「するぜ」とか口調を加えてあげると文章が柔らかくなっていいと思います。

 

 

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今回はここまでです。いかがでしたでしょうか?やってみれば簡単なことなんですが、ケーダブが倒置押韻法を開発するまで打開策がなかったように、やってみないと気づけない文章形式だったりします。これで目的語、動詞で単語韻を踏むことができるようになりました。

 

さらに言うなら、今回の押韻法を利用することで語形に縛られることなく動詞に対して目的語で韻を踏んだりできるようになったわけです!たとえば「咀嚼(動詞)」と「旅客(目的語)」のようにです。以前はこの咀嚼に過去現在未来...などの語形が張り付いて、一定の状況でしか韻が踏めなかったわけですね。これも熟語様々ですな!

 

というわけで動詞脚韻の項は以上になります!次回のTipsでお会いしましょう〜〜