韻とアイデアほか

日本語の押韻などに関する走り書きetc...

【音楽の感想文】NF Zessho - CURE

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1.[Side B]intro【Prod by.NF Zessho】 
2.Water flow【Prod by.NF Zessho】
3.Jenny Gump【Prod by.NF Zessho】 
4.Unlade【Prod by.NF Zessho】
5.skit【Prod by.NF Zessho】
6.Blono's Way【Prod by.NF Zessho】
7.Velvet Sofa【Prod by.NF Zessho】
8.the World Beginning【Prod by.NF Zessho】 
9.Inner Child【Prod by.NF Zessho】
10.[Side A]intro【Prod by.NF Zessho】
11.Jenny Gump[Another] feat. サトウユウヤ【Prod by.NF Zessho】 
12.Blono's Way[Another]feat.RAITAMEN【Prod by.Sweet William】 
13.Velvet Sofa[Another]【Prod by.lee(asano+ryuhei)】
14.Refrain feat.Yoshinuma【Prod by.NF Zessho&Yoshinuma】
15.Hey People【Prod by.Arμ-2】
16.Wonder Child feat. 唾奇【Prod by.NF Zessho】

 

 福岡は早良区レペゼン、"ネットネイティブ世代"と形容されるNF Zesshoの3枚目のアルバムだ。まだbenzeezyが"JPRAPドットコム"なんかをやってて、日本語ラップのコミュニティ間で個々のMixtape配信が認識できていた時期からの——とか面倒な説明はいいですよね(チラ)。

 

 事前のインタビューで紹介されているように今作はSide BとAの二部構成となっていて、前編では孤独に制作を続ける彼(全曲セルフプロデュースというから驚き)、後編では仲間とともに前向きに進んでいく彼が描写されていく。この明暗の対比は楽曲もさることながらリリックを通しても見て取れると思う(02.Water flowの"みんな死んだらいいと思った" と 14.Refrainの"俺の仲間や兄弟をRepresent/ラップしてる時それかそれ以上に今も救われてる" の差異はわかりやすい)。

 

 とにかくSide Aの眩しさが印象的なアルバムだ。Side B後半のどことなく色彩のあせた感じ、息苦しさから解放されるように「行きますか」の掛け声とともに始まる11.Jenny Gump[Another]はこころなしかソロバージョンより音が良く聴こえるから不思議。これはサウンドエンジニアのマジックだったりするんだろうか? もちろんサトウユウヤが蹴るバースも一級品で、Jinmenusagiの『このままで』で見せたクールさとスキルをここでも存分に見せつけている。こうなると一刻もソロ作を!となる訳だが...

 

 とりわけ眩しいのはMV公開もされた12.Blono's Way[Another]で満場一致だろうと思う。ソロではそれほど頭に残らなかったHookの"Soulで延命/まるでブチャラティ/アリアリ...Ah"がSweet Williamのビートの上では完璧にキマッていて素晴らしいし、客演のRAITAMENが書くゲームネタ溢れる歌詞もたまらない。2018上半期のベスト・バンガーなこと間違いなし。"ヤバいバイトそれかBYDO"は色々面白すぎでしょ!

 

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 13.Velvet Sofa[Another]のleeが紡ぐピアノ使いの『明るいのにやたら感傷的な響き』とか、あとに続く 14.Refrain で盟友Yoshinumaが繰り出す締めのライン"冴えてないやり方はいくらでもあるだろ"なんかは悲観と希望が濁って入り混じるようで、このアルバムで繰り返し表現されている葛藤を端的にまとめあげてるなと感じた。主役のZesshoもそうだし、聴き返してみるとAWOLの面々も(眩しい中で)どこか影のあるバースを蹴っているのが分かる。

 

 ひとつ物足りないかな、と感じたのはSide Aの"眩しさ"に対してSide Bの"真っ暗さ"が弱いところだ。アルバムで一番邪悪なライムとビートを連ねるWater flowと本人には珍しい808で打ち込んだビートの04.Unladeまでは良い流れなのだが、その後のSkitを挟んだ後は割とポジティブな方向に(ビートがそういう印象にさせているのか)持ち直してしまっているのが個人的にウーンとなるポイントだった。

 どうせならこのまま堕ちるままに転落して悲劇的な末路を迎える、という展開の方がSide Aの光輝く印象に対して強烈なコントラストになったのではと思う。それこそ、先行配信曲の『Quality』で言及した"詐欺のバイト"で逮捕されるオチだったりしたら「伏線だったのか!」みたいになってちょっとチビったかもしれない。

 

 しかしそういった作為的、あるいは『作り物っぽさ』が介入しないワケも分かるのが正直なところだ。インタビューで彼はSide Bを"別の時間軸/IFのストーリー"と表現していたが、実のところSide Bもその時々の彼のネガティブを再現しているだけで、その感情自体はIFでもなんでもないんじゃないかと考える。もちろんこれは憶測に過ぎないけれど、2ndアルバムで彼がラップしてみせた"混沌とした感情模様"を考えるとあながち間違いじゃない気がしてくる。

 

 

 ビートメイク技術はますます磨きがかかり、ラップも三連符を多用した特徴的なものに変わった。配給も自主から大御所のマンハッタンレコードになり、Pitch Odd Mansion周辺の援護射撃も受けて新境地を見せた今作。ようやく陽の目を見つつある彼だけども、次はどんな作品を作ってくれるのか...今後がますます楽しみになるアルバムだった。1stからチェックしている人は分かってくれると思うが、本当に"堅実"という言葉が似合うアーティストだと思う。このまま全力でのし上がって行ってほしい。マジで。(というわけでこの曲でレビューを締めたい)

 

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では!