韻とアイデアほか

日本語の押韻などに関する走り書きetc...

【Grime】グライムって何——①どんな曲があんの?

f:id:Tachibuana:20180623081819j:plain

「グライムって何なの? イギリスで流行ってるのは知ってるけど...」

アメリカのトラップと何が違うの?」

「なんかスカスカでチープじゃない?」 

 

 "GRIME"とは何か。それは遡ること20年前...と語りたいのは山々なんですが、自分も2年前の夏にFNMNLの該当記事で興味を持ったクチなので詳しいことは知りません(爆)

fnmnl.tv

 しかし人並みにこの二年でグライムを学んだので、カッチョイイ曲だけは沢山知っておりマス。『これからグライム聴き始めたいんだけど、どこから手をつけたらいいか...』なんて方、あるいは『いっちょ日本語ラッパーからグライムMCに転身するぜ!やり方知らんけど!』なんていう舐めたクソガキ...歓迎しましょう!

 

 つーわけで今回『グライムって何』シリーズと題しまして、なんだか記事っぽい駄文を書きつづろうと思います。

 第一回はとにかく曲を聴いてもらって、グライムのノリに慣れてもらいます。内容はウィキペディア覗きつつ半分ノリで書いてるので、正しい歴史とか各MCの背景などは詳しい人——主に黒服を身を包んだ日本のグライムMCとかDJ——にツイッターとかで質疑応答してください(丸投げ)。では早速まいりましょう!

 

 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 

Wiley - Speaker Box

 グライムを創設した張本人にして"グライムのゴッドファーザー"とか呼ばれているMC。近年のUK音楽シーンへの多大な貢献により、英国王室から直々に大英帝国勲章(MBE)を受勲したのが記憶に新しい。MBE受勲がどれくらいヤバいか...『アデルやエド・シーランなどと同等の権威』と言えば伝わるだろうか。しかし決定的に違うのは、後者のふたりが"いちミュージシャン"に収まるのに対し、彼は若者が生き甲斐を燃やす"舞台そのもの"を作り上げたというところだ。

 EU諸国、アジアと、どこもかしこもUSのトラップの影響に飲まれていく中で『UKのアイデンティティー』を保ち続けられているのは紛れもなく彼の功績が大きいだろう。

 

Dizzee Rascal - I Luv U

 Grime最初の出世頭であり、未だ並ぶ傑作がないと言われる『Boy In Da Corner』("グライムのバイブル"と呼ばれる)を作り上げ、前述したWileyと犬猿の仲、そして現在なぜかアンチ・グライムの立場にたつMC。どうしてこうなった。唯一無二の声とフローを誇り、1stアルバムで彼が提示した数々の『バースの形式美』は、現在のグライムラップの基軸のひとつになっている。ぜひアルバムを手に取ってみてほしい。

 あまりに先鋭的すぎて、彼が現在UKドリル(US発祥!)をプッシュしているのがたまに不思議になる。本当にどうしてこうなった...

 

Skepta ft. JME - That's Not Me

 SkeptaとJMEはグライム最大のレーベル『Boy Better Know』の創業者にして代表的グライムMCの一人だ。Skeptaは2016年にアルバム『Konnichiwa』でマーキュリーの最優秀アルバム賞を受賞している(グライムが受賞するのはDizzeeの1st以来13年ぶりの快挙)。

 

JME - INTEGRITY

 JMEは禁煙禁酒主義者かつヴィーガン、さらに3Dグラフィックで最優秀賞を修めて大学を卒業するもアングラでグライムを志す...という異色の経歴を持つMCで、その生真面目さはどの曲を聴いても飛び交う『Serious』("マジで、真剣に"の意味)の合言葉で端的に現れていると思う。しかし片やゲーム好きで、携帯の着メロ作りやマリオペイントなどで作曲を始めたというから面白い。

 知名度に反比例して、両者ともアルバムの楽曲にすこっっっっしのポップさもない。おそらく日本の"ビート中心でラッパー二の次な"サンプリングヒップホップに慣れたリスナーには取っ付きづらい作品群だと思う。しかし慣れると分かってくるので、ピンと来なければ素直に後回しするといい。

 

Flowdan - Flatline

 FlowdanはWileyや、かつてDizzee Rascalも所属していたクルー『Roll Deep』の主要メンバーの一人だ。地を這う、というか震わせるような低い声があまりに特徴的なMCで、その個性からグライム以外のUK音楽シーンでもよく起用されている。彼の2016年作『Disaster Piece』はシネマティックなパーカッションとホラー的シンセサウンドが多用され、ヒップホップリスナーにはもっとも聴きやすく、かつダークな作品に仕上がっている。どこから手をつけていいかわからない方に是非オススメしたい。

 ちなみにTwitterで彼の曲や名前を呟くとエゴサされてやたらとリツイートされるので、きになる人はカタカナ表記にするといいと思います(心底どうでもいい情報...)。

 

P Money - Panasonic 

"Don’t get rude, don’t hype, don’t risk it
無礼も誇張もするな、そいつを危険に晒すなよ
Don’t give me the lip, ‘cus the red stuff covering your mouth
俺にキスするな、お前のを赤い塗料が覆うから
I ain’t gonna be lipstick
俺は口紅にはならねえよ
Uppercuts and jabs, I’ll mix it
アッパーカットとジャブ織り混ぜるだろうってことだ"

  これは2009年に彼が蹴ったバースのほんの一部だ(上曲の歌詞ではない)。P Moneyはその類稀なワードプレイとユーモアで知られている。『Mad』『Round the Clock』『Numbers & Latters』...など、彼の言葉遊びの傑作は挙げればキリがない。ローカルやリアルに根差し凝った韻律を避けるグライムシーンの中で、彼のような存在は珍しい。

 加えて彼はMCと強烈なビーフGrimeだと"クラッシュ"というらしい)を繰り広げてシーンを沸かせることにも定評がある。昨年のDot Rottenとのクラッシュは総計1時間10分にも及ぶ壮絶さだった。

 

Mumdance - Take Time feat. Novelist

"They could have gucci belts
彼らはグッチのベルトを所有できたけど
But go home to a empty fridge
空っぽの冷蔵庫のために家へ帰る
I take time and think
俺は時間を取って考える
Rudeboy, what you think this is?
不良少年、これはなんだと思う?"

 2014年、ミニマルな楽曲を作るMumdanceと組んで現れたNovelistは"小説家"の名にふさわしく、グライムにしては少し客観的でズレたリリックを書いていた。Ele-kingでプッシュされているので名前くらいは知っている人もいるかもしれない。しかし彼の本領はリリック以上に若さからくる"起伏のある明るいデリバリー"にあるように思う。セルフプロデュースの『Endz』などはその典型例だ。

 ようやく出た新作は歌詞にしてもフローにしても若干キャラを見失っている感じがあったけれど、Spotifyで聴けるので一聴してみることを勧める。

 

JD. Reid feat. D Double E - Roshi

 『常に氷を口に入れながらラップしてるみたいだ!』なんて舌足らずなフロウに対してYouTubeのコメント欄で揶揄されているが、D Double Eのラップは"にも関わらず"、あるいは"だからこそ"、氷柱のように冷たく鋭利だ。UKで著名なMCであるKanoの名作『Home Sweet Home』の客演曲をチェックしてみれば、リリース当時2005年の時点で彼のフローが完成されていることが伺えるだろう。

 今年の2月にアルバムがリリースされたそうだが、ここ日本(というか日本語のウェブ)ではまったくチェックのしようがなくて情報の隔絶具合に口が塞がらなくなる...

 

J-mal - Enterprise

 J-malはつい最近、韓国と日本のグライムMCたちを総動員して楽曲のリミックスを作ったりして話題になったMCだ。はるばる東京までライブしにくるMCはFlowdanやP Money、Novelistなど数多いが、現地のプレイヤーを大規模に巻き込んで行動を起こしたMCは彼くらいのものである。その圧巻の行動力もさることながら、楽曲で披露されるフロウの跳躍、しなやかさは弦楽器の弓さながらに力強い。

 上曲後半ではさらにフランス語でグライムラップを繰り出し始めるものだから「どれだけ器用なんだこの人は...」みたいになる。UKでの注目度は紹介した他のMCに比べ圧倒的に低く、正当な評価がなされることを期待したい。

 

STORMZY - COLD

 2015年に公開した『Shut Up』が瞬く間に1千万再生したと思ったらスター街道まっしぐらにアルバム『Gang Signs & Prayer』をリリース、そのままブリット・アワーズの2018最優秀ブリティッシュアルバムを受賞するという破天荒っぷり。そのアルバムの楽曲群はメジャーを意識したメロウなものが大半を占めたが、いくつかの曲はインディーレーベルのMCたち"よりも"と言って良い正統派なグライムサウンドを聴かせてくれる。

 特にMV公開された『Big For Your Boots』『Cold』の飽和したサブベースや808のハイハットを省いたビートは黎明期のグライムがそのまま進化したような音で、その向きには「これだよコレ!」となること請け合いだ。リリックは知らん(爆)

 

 - - - - - - - - - - - - - - 

 

 どうでしたか?他にも魅力的なMCは数多くいますが、書き漏れたぶんはYoutubeの関連動画から各自ディグっていただきたいと思います...(Kanoなどは純粋なグライムMCか判断に迷ったので保留しました。でもカッコイイんで調べて!)

 

 次回はグライムのビートの作り方について素人なりに考察しようかと思います。そもそもこの記事を書くきっかけになったのはTwitterで一時浮上した『ボカログライム』なる単語がきっかけで、グライムをあまり知らないボカロPの方達の助けになるかな〜〜と今回書くに至りました。

 ボカロシーンはドラムンベースやリキッドファンクやダブステップなど幅広いジャンルにクリエイターがいるので、そろそろグライムもええんじゃないか...などとスケべ心を醸し出しつつ、この辺で一旦筆を置きたいと思います。ではまた!