韻とアイデアほか

日本語の押韻などに関する走り書きetc...

【翻訳練習】Dirty Dike - Prawns

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Dirty Dike - Prawns

 

 訳練習、第3回は前回から引き続きDirty Dike、アルバム『Sucking On The Prawns In The Moonlight』から表題曲『Prawns』です。

 

 最初このアルバムタイトルを見た時「???」みたいになったことを覚えているんですが、最後まで聴いて分かるのはこの「???」が正しい反応だったということです。つまり"荒唐無稽"こそがこの表題の意味する所なんですね(おそらく)。あるいはPrawns(エビ)がMVの通り、薬物か何かの隠喩ということも考えられますが...

 

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 訳しててふと思ったんですが、UKの一部のラッパーはこういった"荒唐無稽"さを、『ドラッグによる幻覚症状』という理由を担保にして"リアルさ"を表現している節があるんじゃないかなと。もちろん憶測に過ぎないですが。

 

 ラップにおける暴力性がアメリカに比べ小さいイギリスにおいて、ギャング的なラップを得意とするのはどちらかといえばグライムMCの方です。もちろん薬物の売買だとか大麻でチル〜的な表現はグライムやUKヒップホップ問わずあるんですが、そうなると米国のラップ音楽やグライムにはない、『UKヒップホップの特異点』というのはどこに見出すのか、という話になってくるわけです。

 

 そこでDirty Dikeのようなナンセンス、あるいはJam Baxterのような幻想感やグロテスク、耽美主義的表現に注目が置かれるわけですが、これっていうのは一見完全なフィクションのようで実は『トリップを"リアルな"体験として描写している』と見ることもできるんじゃないかなと。

 

 実際この曲の冒頭は抽象的ながら注射のような描写で始まりますし、Jam Baxterのアルバム『...so we ate them whole』の歌詞カードの序文では、こんな意味深な言葉が述べられております。

The Ayahuasca experience is incredibly hard to describe.

アヤワスカの体験は説明するのが非常に難しい。

This is an amalgamation of three separate ceremonies,

これは3つの別個の儀式の融合で、

comprised of the edited and heavily watered down highlights. 

編集され、酷く骨抜きにされたハイライトで構成されてるんだ。

  もちろんリリックの全てが体験に基づいているわけではないでしょうが、このように薬物使用歴を逆手に取ることで"単純な荒唐無稽"だったものに、にわかに現実味のような何かを帯びさせることに成功している訳です。

 

 しかもこういった自動筆記に近い手法が可能になることで非常に素早く、ブレインストーミング的に詩を書き上げることが可能になり、結果として彼は2年に1枚のペースで自身のフルアルバムを完成させ、さらには客演、友人たちのアルバムのフルプロデュースまで手がけています。これは創作家の視点から見て大いに参考になるのではないでしょうか。

 

- ◆ -

 ...などと高尚な説明をしてはみるものの、今回紹介する曲は『最も無に近づいたシュルレアリスム画家』とでも表現すればいいのか、ことごとく中身がありません(爆)。おくすりの描写さえ入れとけば無秩序にも一貫性が生まれると思ってる節がある。

 

 前置きが長くなってしまいましたが、以下が翻訳となります。彼の非常に韻律に重きが置かれたスタイルをお楽しみください...

 

 

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[Verse 1]
It rained, pixelated rituals through connected dots
雨が降った、連続した点を貫く点描の儀式さ
And stopped depressive intervals of big pathetic system, pops
そして巨大で哀れなシステムの鬱インターバルを停止した——ブスリ


"Lie down"
"横になるか"


My sky-bound fragments of a mind drown
俺の宙を舞う意識の散らばりが沈殿していく
I ride madness on the land mines in my mouth
俺がの中にある地雷の狂気を踏み抜くと、
And my crown is shining like a thousand bright diamonds
王冠は眩しい千のダイヤモンドのように輝き
With a crowded mind vibrant in a clouded mic, silence
結露したマイクに込められた混乱の躍動に——静まり返る


"It's bliss"
"たまらない"


Something in the wind explained a simple song
風の中で何かがシンプルな歌を説明した
With every lyric intertwined with images and printed wrong
——印刷ミスされた「画像に絡んだリリック」を用いて


And not a single thing's forgot
そしてひとつの事を忘れるな
When deep within my mingled pot
俺の混濁した鍋の深くに居るとき、
A every single thing that we can think of when we think to stop
考えることを止めるとき考えられる全てのこと——
It's not a lot, but trust me it's my universe
それは多くはないが、信じな、そいつは俺の宇宙
I'll burst the fucking music out the human in a lucid verse
明快な詩で人間にクソッタレな音楽を解き放ってやるぜ

 

[Hook]
I guess some people feed off the drugs and effects
いくらかの連中はヤクと効能で力を得てると思うぜ
While these other people dream about the money and sex
この他の連中が金とセックスを夢見る間にさ
I see people being feeble when they're juggling debt
よく分かるよ借金を繰るとき連中が弱ってるのが
Me, I'm living like a human being, love or respect
俺、俺なら人間らしく生きてる、愛すか尊敬しな

 

[Verse 2]
There ain't a single fucking thing I won't explore within
クソのひとつもない——俺が探査しない物事は
Force it in
押し入る
I take the biggest portion, bored - I pour the gin
俺は最大のポーションを取る...つまらん——ジンを注ぐ


There ain't a flying pig or universe I could ignore
無視できた空飛ぶ豚や宇宙はない
I simply see the purest love in everything you're looking for
俺にはあんたの探す全てに純粋な愛が見て取れるぜ


There ain't a friend I could've banned
絶交できた友人はいない
Oh man I'd die for mine
おお、俺は俺のために死ぬだろう
The one thing I keep inside my mind is sticking right beside
俺が心に留めてることのひとつは「右に倣え」だ


There ain't a simple pickled reason why I'm such a dick
俺が酷くチンチン(嫌な奴)なことに単純でチンチンな(酔狂な)理由はない
Maybe it's because the times you've seen me, I'm just fucking pissed?
おそらくあんたが俺を見かけた時、俺はクソほどションベンして(酔っ払って)たろ?


"Trust in this"
"確信するね"


There ain't an evil bone inside my skin
俺の皮膚下に悪魔の骨は通ってない
And I ain't here to cry alone and play the tiny violin
そして独りで泣いてちっぽけなバイオリンを弾くために俺はここに居るわけじゃない


I'm just thinking
俺はただ思ってるんだ
Triple gin slings on a crystallised bed of silver skin is what I sink in
銀結晶のベッドにのった三杯のジン・スリングこそ俺の沈んでいくものだと


So chin chin
だから乾杯しよう
Raise a glass, a snorkle and a spout
上げろグラスを、シュノーケルを、水差しの口
Drink away your boredom, take an awkward little bow
お前の退屈を飲み干して、ぶざまな小さい弓を摘め


Now struggle with the force in your house
今、強いられた足掻きがお前の家庭に
Now you're juggling these mother fucking prawns in your mouth
——今、お前はこのクソったれなエビ達を口でかき混ぜている

 

[Outro]
Move by
場所を変える
Man I'm too high
なあ俺はブッ飛びすぎ
Sucking on these prawns in the moonlight
月明かりの下でエビにむしゃぶりついてる


Move by
場所を変える
Man I'm just too high
なあ俺はマジでブッ飛びすぎ
Sucking on these prawns in the moonlight...
月明かりの下でエビにむしゃぶりついてる...