韻とアイデアほか

7割は合ってる / 誤訳の指摘は24時間お待ちしとります

【翻訳練習】Blueprint - Ten Paces

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Blueprint - Ten Paces

 

 讐を果たしましょう。ってなわけでEPラスト、"Ten Paces"(10歩)。この10歩というのは、ピストル決闘で戦士二人が背中を合わせて進む歩数のことですね。曲の終盤においては他の事も意味していそうですが...。

 

 まずタシャとえっちしたのは童貞の筆者でも間違いないと断言できるんですが――ええいそれはどうでもいいだろ――それはともかく、推理が必要な場面はラストですよラスト。このアルバム、なんと投げっぱなしジャーマン...つまりクリフハンガーで締めくくられてしまうんですよ。

 

 様々な解釈ができるのでこれと断定はしませんが、こういう幾つもの含みをもたせる表現はやはり後味を複雑にしますよね。思わず舌鼓を打ちまくってじっくり堪能したくなります。海外ドラマさながら、真相はシーズン2へ持ち越しとなります。

 ...次回作? そんなものはねえ!(核爆)

 

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【翻訳練習】Blueprint - The Watering Hole

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Blueprint - The Watering Hole

 

 ミファイナル、6曲目! 捜査に明け暮れ、しかし進展はなく、瀬戸際に追い詰められたBlueprint氏は気分を晴らそうと酒場で一杯ひっかけます。葛藤する孤独な男のすがた。するとそこにある人物が現れて...?

 

 ムード! このビート、このリリック! たまりませんね~~煙が立ち上り、埃と酒気とが、照明もまばらな暗室に沈殿している...そんな光景が重厚なギターサンプルから、耳の奥へ! ダイレクトに沁み込んでくるかのようです。

 

 ちなみにですが。こういった殺伐とした風景、邪道をいく男、犯罪行為、そしてファム・ファタール(ネタバレになるので曲を読んでからクリックしてください)。こういう要素がそろった映画のことをフィルム・ノワールと呼んだりするそうです。

 

 Roc Marciano以降の10年代NYアングラ作品群も、よく主要レビューサイトで"フィルム・ノワール的"と表現されていたりします。もし興味があれば調べてみてください。源流としてはパルプ・マガジンやフランスのノワール小説なんかがあるそうですが、詳しいことは存じておりません。

 

 さあいよいよ終盤です。匿名グラフィティライター氏はいったいどうなってしまうのか、目的を果たすことはできるのかーッ!? チャンネルはそのままです!

 

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【翻訳練習】Blueprint - Cornerstore Showdown

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Blueprint - Corner Store Showdown

 

 ルバム後半戦!5曲目"Corner Store Showdown"でようやく捜査再開となり、容疑者をこらしめるため穴場を探っていきます。地元の路地、よくある角の雑貨店に張り込むBlueprint氏でしたが...

 

 Aesop Rockが組み立てる程よく抜けた、ちょっと退廃的な雰囲気のビート。そこに乗せられるリリックもまた、アメリカの古い町と言われて想像されるソレです。Roc Marciano氏だったら冒頭8小節でショーウィンドウが割れて銃撃戦でも始まりそうなところですが、Blueprint氏の場合はとにかく丁寧で、小説的です。

 

 しかしゆっくりであるがゆえに生じるムードというのもまたあり、ここでのスピード感は功を奏していると言えるでしょう。"クソデカいショットガン"、"独立記念日"などの言葉選びも、都市部をやや外れた保守的地域を思わせて秀逸です。

 「知った口を叩くが、アメリカに行った事はあるのか」って? もちろんですよ、グランド・セフト・オートで学習済みです!

 

 しかしBlueprint氏の語りが上手い。地味な調子を続けながらリスナーをロックし続けるというのは難しいものですが、中盤からの意図せぬ方向へ転がるプロットには、思わずヘッドホンをつけながら前のめりさせる推進力があります。

 

 何かの本で、「初代『スーパーマリオブラザーズ』のルールは"クッパを倒すこと"ではなく"右端に到達すること"であり、それが簡潔な面白さに繋がっている」というのを読んだことがあるんですが、ことストーリーテリングでも同じことが言えるのではと、この曲を読んでて思いますね。明らかに、このリリックには上から下への不可逆なベクトルが引かれてますよ。クッパ不在のまま。

 

 

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【翻訳練習】Blueprint - Tears of a Drone

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Blueprint - Tears of a Drone

 

 ータベースを使った犯人探し。しかし突如ボットがフリーズする謎の妨害が発生、容疑者捜索の手はいったん止められてしまいます。いよいよきな臭くなってきやがったぜ!!

 

 4曲目"Tears of a Drone"、早くも全7曲のEPの曲がり角なわけですが、ここでストーリーは進行せず、PC用語のもと、1曲目にあった体制と反体制のダブルミーニングを再び試みております。Droneという語も、PCのボットと無人戦闘機を二重で意味しているかと思われます。

 

 電子機器による監視といえばアメリカ国家安全保障局の元局員、エドワード・スノーデンの暴露が有名ですね。この記事で深入りはしないので、詳しくはリンク先のWikiで読んでほしいですが...まあ世界の裏側ってこんなものなのか、という感想を抱かせますね。そこもまた作品コンセプトの"現実"に絡めた意図なのでしょうか。

 

 とはいえ公認された事実であったとして。この手の内容は事実としてコンシャスラップにすると、とたんに説教くさい陰謀論になってしまうのがアレですよね。

 その点、ストーリーテリングというフィクションにリアリティを持たせる方法として、歴史や事件を引用すると中々これで良い塩梅なのかもしれません。以前に紹介したHolocaust氏もそうでしたが、ただの作り話に深みが生まれますよね。

 

 

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【翻訳練習】Blueprint - Graffiti Writer Killed

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Blueprint - Graffiti Writer Killed

 

 上での格闘から数日後、Blueprintは新たな局面を迎えます――というわけで序破急の序、3曲目"Graffiti Writer Killed"です。"母親宅で目が覚めた"と始まるので、どうやら主人公は若い大学/専門生あたりか、あるいは自分のような子供部屋おじさんってことになりそうですね。ん?

 

 内容はネタバレになるので伏せるとして、ここではAesop Rockのビートについて。彼のビートはアルバム『Skelethon』を境にめちゃくちゃ洗練されたと思うんですが、このアルバムでのパッケージングぶりは本人のその後の作を上回るのではというほど。

 

 ビートを先に用意したのか、あるいは逆かは存じ上げないですが、ムードとリリックが完全にマッチしているし、それがEP終局まで起承転結をともなって続くのが素晴らしい。ドラムパターンも多様で飽きさせません。

 

 Blueprintのセルフプロデュースでこういう不穏なトラックはあまり聴けないので、その点でも貴重ですね。相変わらずマルチライムも隙がありません。

 

 

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【翻訳練習】Blueprint - Not Sure Why I Came Back

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Blueprint - Not Sure Why I Came Back

 

 ントロが終わり、ようやく本編が始まります...悪漢2人組に襲われる2曲目"Not Sure Why I Came Back"。ストーリーテリングといえば! と言ってまず挙がる基本が情景描写なわけですが、ここでBlueprintは純粋な殴り合いに焦点を置き、腰を据え丁寧にデッサンしていきます。

 

 このアルバム、全体的にすごく地味なんですが、それが個人的に興味深いんですよね。ギャングスタラップのように銃や車のブランド名、金とセックス、ハリウッドさながらのアクション...そういったカラフルで分かりやすいものが無いんです。

 代わりにあるのが肉弾戦だったり、郊外の廃れた風景であったり。使ってる道具もナイフとかビデオカメラ、あげくマッチョなMCなら絶対使わなそうな唐辛子スプレーまで登場します。

 

 それがある意味での制約、面白さに繋がってるなと思いますね。露骨なギャングスタが遠慮されがちな日本などでも受け入れられそうな...いわゆる"イキリ"の感じない範囲のアウトローなのです。ちょっとダサいとも言う。

 これはBlueprint氏のギャングを好まない思想はもちろん、1曲目で宣言した"現実"をまさに反映しているってことなんですよね。こういう細かいところでコンセプトが一貫しているのがまたオツなんですよ...。

 

 曲単体では特にオチもない感じなんですが、後の展開の立ち上げとなっているのでゆるく読んでみてくだされ。

 

 

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【翻訳練習】Blueprint - Vigilante Genesis

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Blueprint - Vigilante Genesis

 

 Albert Shepard、通称Blueprintのことは、英語の分からない00年代アングラヒップホップファンでもご存じでしょう。オハイオ州コロンバスにWeightless Recordingsを構え、同郷のリリシストIllogicの初期数作を全面プロデュース。傍ら、MCとしてもコンセプチュアルな『1988』や、やはり同郷のビートメーカーRJD2とのクルー"Soul Position"での『8 Million Stories』などなど、数えきれない量のビートとリリックをリリースし続けている大ベテランです。

 

 最近でもその二刀流を象徴する18年作『Two-Headed Monster』を発表するなど、意欲的なリリースを重ねています。~~とか何とか書いておきながら、筆者がその全てを追えているわけではないのですが。

 

 さて本記事で紹介するのは、そんな彼がアングラシーンの出世頭であるAesop Rockをプロデューサーとして招いたEP『Vigilante Genesis(16年作)』になります。彼らの公式での絡みは、Aesop Rockの『Daylight EP(02年作)』収録"Alchemy"から長いもので、インディを駆け抜けた戦友どうしのタッグってワケですね。アツい!

 

 本作はBlueprintが"ガスマスクをかぶった匿名グラフィティアーティスト"に扮し、反体制を作品に込めたりしてるうち、路上でのゴタゴタに巻き込まれる...というコンセプトEPになっております。全7曲、20分と短いのですが、中々面白いできばえとなっとります。

 

 表題曲である1曲目のこちらは、そのイントロに相応しい反体制派の表明となっているんですが、面白いのはひっそり仕込まれたダブルミーニング

 8小節目の"新たな標的の爆撃"から始まって、彼はここで"権力側の戦争犯罪"と、"グラフィティ作家としての完全犯罪"をダブらせてラップさせてるんですね。それは後半の"暗示的な、嘆かわしい含意(サブリミナル)"などの...恐らく都市伝説とかでよく言われてる"サンカッケーやハンドサイン"、それとタグとの比較でも分かるかと思います。

 

 ストーリーテリングをしながらこういった言葉遊びを織り交ぜられる辺り、さすがは経歴20年のベテランといったところでしょうか。当たり前のごとく編まれた子気味よいマルチライムも含め、Blueprintの芸の術を楽しんでいってください。翻訳はいつも通りクソですがね(爆)

 

 

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