韻とアイデアほか

7割は合ってる / 誤訳の指摘は24時間お待ちしとります

【翻訳練習】Madvillain - Meat Grinder

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Madvillain - Meat Grinder

 

 USアングラの鉄仮面と聞いて誰だかわかるヘッズは、この変人のおっさんが何を言っているのか気になっているかと思います。仮想のアコーディオンをかき鳴らす、伝説的MCであり奇抜で時に怠惰なビートメイカー...

 そんなわけで翻訳練習、第6回目は...なんとMF DOOM("全て大文字")、しかもMadvillainの音源にすることにいたしました。そしてどうせなので、このアルバムはシリーズ化して今後ゆっくり全曲翻訳していきたいと思います(ただし翻訳精度に関してはまったく保証しかねます。間違いがあったらバンバン指摘してください)。

 ちなみに1曲目『Accordion』に関しては別のブログに素晴らしい翻訳が載っているので、そちらをググって読んでいただけたらなと思います。このちんけなブログの比にならん。

 

 さて前置きついでに、ここで筆者が述べておきたいのはいかにDOOMがいい加減かつ押韻主義者的なMCなのかということです。

 

 押韻主義者、というと日本語ラップ界隈では否定的に扱われる概念ではありますが、こと本場USですと一定の支持層がありますし、いわゆるアングラシーンはそれが前提であると言っても過言ではありません。アメリカだとそれこそ一定の知名度があるMCだけでも数え切れないほど...

 しかし日本の"アングラ"というと埃っぽいサンプルに抑揚をおさえたラップが乗ればアングラ、といった具合で、言葉遊びやライムスキームの高度さで見てもUSと見劣りしている...のですが、そういった人達に限ってある種信仰のように挙げられるのがこのMadvillain『Madvillainy』だと思うんですね。

 でもちょっと言っておきたいのは、DOOMが属するカテゴリというのはそういった人達が毛嫌いしてそうなLil Wayneと同じ"パンチライナー"の枠だということです。

 

 筆者は学生時代、KMDとMF DOOM名義の1stアルバムが国内版対訳付きで再発されて意気揚々と買いにいった可愛いらしいヘッズのひとりだったわけですけど、その1stのブックレットに載ってた対訳を見て驚愕しましたね。一見すると文章にまったく脈絡がない

  しかもさらに驚くことに、翻訳されてない空白の行が数多あるというずさんぶり。これを見て当時、なんていう手抜き仕事なんだとガックリきたことを覚えています。しかし、後ほど嫌というほど理解していただけると思いますし、まさに自分は今回の作業で""把握""したんですが、たまに頭痛くなるような翻訳できないラインが散見されるのが彼のスタイルなんですね。あの空白はそれだったのかな...なんて今は思います。

 

 もちろん彼のリリックは中身がないようであったりするのがミソで、例えば代表曲『Doomsday』では開幕2小節目で

 "馬の尻尾をきつく、たてがみを多く握るようにマイクを掴め"

という変なラインが飛び出し、そのあと全く違うモチーフで何事もなかったかのようにラップが続くんですが、そのバースの最後の方で

"ドゥルルルルー!あれは音楽のデイリーダブル(競馬)だ

ラッパーはトラブルから俺を守るために落馬する必要がある

 というまた奇妙なラインが披露されて、なんとなく1バースが脈絡を持って締められるという。彼は実はイギリス出身なのですが、この笑いと哀愁が同時にやってくる感じがなんとも英国的ユーモアだななどと思うわけです。

 (余談。ちなみに彼のインスピレーション元は沢山あるそうですが、あるインタビューで述べたCharles Bukowskiの影響が何より大きいと自分は考えます。まず彼の小説群の翻訳を読んでもらえればわかるんですが、脈絡ないパンチラインがやってくる感じが本当にそっくりなんですよね。気になる方は『パルプ』『勝手に生きろ!』あたりがおすすめなので是非。特に『パルプ』はDOOMの弟Subrocが死んだ翌年に刊行されたBukowski73歳の "死"をテーマにした遺作であり、タイミング的に相当な影響を与えたと推測されます。またBukowskiは熱心な競馬中毒者であり、それが上記の引用につながっている...と想像すると夢が広がりんぐ。もちろん憶測に過ぎないのですが)

 

 とこんな具合で、内容を読み込んでいくとおよそ定例的なクールとは一線を画した"意図的まぬけ"、あるいはそれを揶揄するようなパンチラインを披露するMCなわけです。押韻箇所でユニークな固有名詞をボムするところから、彼は"意味的な押韻主義者"だなと自分は思うに至ってるわけであります...

 

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 そして今回紹介する『Madvillainy』の3曲目(ラップ入だと2曲目)となるこの曲は、意味的である以上に"量的な押韻主義者"としての頭角を示している1曲となっております。なまじMadlibのビートが格好イイから成り立っていますが、本当に意味不明すぎて翻訳中にキーボードへし折りたくなった。

 

 いちおう適当な説明をつけるなら、この曲は"ミートグラインダー(肉挽き器)"をモチーフ、象徴にラップしたみたいな曲です。

 このモチーフには二種類の意味があり、ひとつは彼の嫌いな類のラップをグチャグチャにしている、ということ。

 あるいはもうひとつ、肉挽き器のように何の思考の歯止めもなく、フリースタイル的に、直前曲である『Accordion』のライン"Slip Like Freudian"のごとくライムをひり出していく、というイメージです。

 最初の十数小節は"チャイナ"という名前のビッチ("彼の嫌いな類"のひとつ)を、その次は金儲け主義で筋トレしまくってるような2000年代メインストリーム当時のMCを、そして最後にはキリスト...というよりアパレルグッズに身を包んだ"神様気取り"をも挽き肉にしてるという感じだと思います(本当に推測でしかないので過信は禁物)。

 

 いつも通り頭韻中間韻を下線、脚韻部分を太文字で強調してるんですが、この曲に関してはもうそれ補足する必要あんのか?って感じなので笑ってやってください。これを見るとICE BAHNがマニア向けとか言えない。

 

 まあ本当によくわからない曲なので、適当に流してくれという感じ。それではこの稚拙でデリシャスな肉塊の説明書をどうぞ(なげやり)...

 

 

 

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[Intro]
Sleeping in a jar!
瓶の中で眠ってろ!
Sleeping in a jar!
瓶の中で眠ってろ!
The jar is under the bed
瓶はベッドの下だ
Sleeping in a jar!
瓶の中で眠ってろ!
The jar is under the bed
瓶はベッドの下だ

 

[Verse:DOOM]
Tripping off the beat kinda, dripping off the meat grinder
ちょいとビートにほざいて(トリップして)、肉挽き器に滴らせる
Heat niner, pimping, stripping, soft sweet minor
——人殺し、金持ち自慢、ストリップ、ソフトで甘い歌声を
China was a neat signer, trouble with the script
"チャイナ"は適切な署名者だった、台本のあるトラブルだ
Digits double dipped, bubble lipped, subtle lisp midget
桁をふたつ加え、唇を厚くした、微かに舌足らずの小娘
Borderline schizo, sort of fine tits though
精神病者すれすれ、良い乳の類にも関わらず
Pour the wine, whore to grind, quarter to nine, let's go
ワインを注げ、挽く(犯す)売女だ,9時まで15分、さあ行こう

 

Ever since ten eleven, glad she made a brethren
10,11時(歳)以来彼女が兄弟を作っていて嬉しいよ
Then it's last down, seven alligator seven, at the gates of heaven
あれは死の床だった、セブン・アリゲーター・セブン(ビール)さ、天国の門にいた
Knocking, no answer slow dancer, hopeless romancer, dopest flow stanzas
ノックする、答えないゆるい踊り子、望み無き浪漫家、最高にドープなフロウの韻文詩
Yes, noVillain, Metal face to Destro
挽いたかって?悪党さ、デストロの鉄仮面
Guess so, still incredible in escrow
そう推測するね保証人取引じゃ未だに驚異的

 

Just say Ho! I'll test the yayo
Hoと返しな!Yayoとテストするぜ
Wild West style fest, y'all best to lay low
ワイルドウェスト・スタイルの祭り、お前は寝とくのが無難
Hey bro, Day Glo, set the bet, pay dough
やあ兄弟Day Glo、金を賭けて、膨張する負債を払いな
Before the cheddar get away, best to get Maaco
勝ちが逃げる前に、保険を賭けとくのが最善だぜ


The worst hated God who perpetrated odd favors
奇妙な贈り物をしでかしてヘイトされた最低の神
Demonstrated in the perforated Rod Lavers
穴あきのロッドレーバー(スニーカー)で実証済みだぜ


...In all quad flavors, Lord save us
...全四種の香りで、主人は我々をお守りくださる

 

Still back in the game like Jack LaLanne
未だジャックラレーンボディビルダー)みたくゲームに帰還する
Think you know the name, don't rack your brain
名前は知ってると思う、頭を悩ませる脳筋になる)なよ——
On a fast track to half insane
——半狂乱向けの速いトラックで
Either in a slow beat or that the speed of "Wrath of Kane"
遅いビートか、Wrath of Kaneの速度か
Laughter, pain
ハハハ、(筋肉/腹が)痛い

 

Hackthoo'ing songs lit, in the booth, with the best host
クシャミしてる曲はアツいぜ、ブースの中で、最高のホスト(madlib)付きじゃあな
Doing bong hits, on the roof, in the west coast
ボングを点火してる、屋根の上、ウェストコーストでさ
He's at it again, mad at the pen
彼はそれに再び至る、イカれた筆さばき
Glad that we win, a tad fat, in a bad hat for men
勝利が喜ばしいぜ、ちょっと大きいか、男に似合わない帽子じゃ
Grind the cinnamon, Manhattan warmongers
シナモンを挽いてな、マンハッタンの戦争屋
You can find the villain in satin, congas
お前はサテンの衣装コンガの中に悪党を発見できるぜ

 

The van screeches
馬車の金切り声
The old man preaches about the gold sand beaches
老人が金の砂浜について説教を説き
The cold hand reaches for the old tan Ellesse's
冷たい手が伸びる古い黄褐色のEllesseを着た——
Jesus
——キリストへと