Jehst - The Return of the Drifter
ゼロ年代のUKアングラ代表作。ライムに偏重し、ノリと格好良さだけを求める姿勢に英国の陰気なヘッズどもは心を鷲掴みにされたのでしょう。90年代UKといえばアメリカの影響下にある王道のブーンバップか、彼らの好むラップを含まないトリップホップか、あるいはRoots Manuvaか...そこにコレ、トリップに任せて重厚なライムを、時に酔っぱらって、時にダークに紡ぎ出す男、Jehstです。
"漂流者の帰還"と銘打たれた通りの展開で、アルバム前半は半幻想的な詩をスピットするんですが、中盤以降になると労働者をあざ笑ったり、一瞬だけ我に返ったり、部屋の中でダラダラしたり、みたいな感じになります。
そもそもこの盤は元となるコンセプトがあって作られたものではなく、それまでに発表された音源にプラスアルファを加えた"音源集"としてリリースされたもの。それでも、構成とうまいタイトル設定のおかげで散漫な印象なく最後まで聴けます。
この"俺はぶっ飛んでるんだから多少の破綻は放っとけ"的な姿勢は、現在のシーンに至るまで脈々と受け継がれていると思います。まあ即興的なラップなんて昔っからあるんですが、卓越した技術のもとロールモデルとして確立したのは、英国だと彼が初めてだったのでしょう。
とりわけヘッズの間で未だに語り草になるイントロの"High Plains Anthem"ですよ...これほどのグルーブ、エネルギー、しぶきが照り返す初夏の光のようなみずみずしさはまずもってお目にかかれないでしょう!
英国のヒップホップに詳しくない読者の方も、これを足掛かりにあちこちへ食指を伸ばしてくれたら嬉しいですね。まあ~UKもUKでサイコーなので。
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Jehst - The Return of the Drifter
2. Skit
4. Bluebells(インスト)
5. 1979
6. The Trilogy(未訳)
11. The Trilogy (Remix)(未訳)