韻とアイデアほか

7割は合ってる / 誤訳の指摘は24時間お待ちしとります

【翻訳練習】Mr. Lif - A Palace in the Sky

f:id:Tachibuana:20220120105816p:plain

Mr. Lif - A Palace in the Sky

 

 々の大団円。世界を掌握した王に下された判決とは――。

 

 11曲目"A Palace in the Sky"でもって、本EPも完結となります。もはや内容について語ることは無いので、いつもの技術論に移ろうかと思うのですが...

 

 その前に本EPを訳すことになったキッカケについてお話ししましょう。既に読んだ方なら察しはついてると思いますが、筆者が本作に注目した理由は他でもなく"探究HIP HOP"のGenaktion氏の著書、『インディラップ・アーカイブ』で本作が紹介されていたからです。

 

 それも、ただ数多ある作品のひとつとして紹介されただけではなくて。本書には6つのパートに分かれた、「ライムを通したリリックの読み解き方を考える」コーナーがあるんですが、その6つめで本曲"Palace in the Sky"の3バース目が紹介されてたんですね。

 これが2ページに分かれて丁寧に解説されてるんですが、驚きでしたね。ただコンセプチュアルな世界観を踏襲してラップするだけでなく、寓話的なオチを、マルチライムを駆使して書き上げているとは。

 

 日本語ラップのリリックに直感的に疑問を覚えたあと、じゃあ本場はどうラップしてるのか~~というのを知る上でにっちもさっちもいかない中、Genaktion氏のブログは当時、本当に大きな助けになりました。そしてまたコレですよ。氏の存在に感謝するばかりです。

 

 そして問題の3バース目なんですが...これが自分で訳してみると、おそらく紙幅の関係で載っていない、もう一つの側面があることが分かったんです。

 

 この3バース目、どうやら修辞技法でいうところの撞着語法(Oxymoron)や皮肉をふんだんに盛り込んでるみたいなんですよね。この撞着語法というのは「矛盾した語句で名詞を修飾する」という技で、文章表現に皮肉的な豊かさを加えたい時に使われるものです。

 

 例えば筆者のような「コンドームを孕ませまくる"死んだあと水を得た魚"の目をしたプロの童貞」はそれをマスターする以前に体現しているわけですが、あまり馴染みのない方がこれを学習するには、量を浴びて身体で覚えるのが手っ取り早いと思われます。

 そういった時に、このMr.Lif氏のラストバースはうってつけの教科書と言っていいのではないでしょうか。撞着語法だけでなく、多彩な角度からの皮肉的ラインがこれでもかとブチ込まれているので、リリックぢからを深めたい方達にはぜひ一押ししたいですね。

 

 そんなわけで、本EP『The Life & Death of Scenery』、翻訳終了です。お付き合いいただき、ありがとうございました。ちなみに...本稿ののち、勝手なボーナストラックとして、もう一曲だけMr. Lif氏の曲を添えさせていただきたいと思います。最後までよろしくお願いします。Tachibuanaでした。

 

 

 

 

 

[Verse 1: Mr. Lif]
As the king sat in his robe, holding the globe
王はローブ姿で地球儀を手にする
Which he kept as a pet, always claiming as a threat
- ペットのように飼い、常に脅威と主張していたものを
He would alter cause and alter falter to keep us in check
彼は俺たちを牽制するために原因や弱点を変え
He said he'd crush our world, the galaxy is just a spec
世界を潰すと言った、銀河系はただの一片に過ぎないと

 

In the corner of his far region, overreaching
彼の遠い領域の隅で、過剰なまでの
Everlasting power, never overthrown by cowards
-永遠の力臆病者には決して倒されない
But the gods didn't look upon this fondly, they called him tawdry
だが神々はこれを良しとせず、彼を下品と呼んだ
As they observed him, they would notice while they're watching
観察しているうち、彼らは気づいたのだろう

 

He would spend hours holding his globe
彼は何時間も地球儀を握っていたのだ
Hoping to discover other factions he could overthrow
 - 打倒できる他の派閥を発見するために
This comic offense incensed the mystics, plus the spirits
この滑稽な攻撃は神秘主義霊魂を怒らせた
Who had died fighting for his causes, the human losses
彼の野望に挑み死んだ、人類の損失たち

 

Such a dangerous territory to tread
踏み込むにはあまりに危険な領域
When you've upset both the balance of the living and the dead
- 生者と死者のバランスを崩した者には
They wanted his head, but found the violence too swift
彼らは王のを欲したが、破壊的に過ぎると分かり
A plan was then devised to they could send him adrift
計画はその後、彼を漂流させるものが立案された

 


[Verse 2: Mr. Lif]
So the gods gathered
そうして神々は集まり
And they conceptualized the king's demise
彼らは王の終焉構想して
They planned to put his palace in the skies
彼の宮殿を天空に置くことを計画した
In the form of vapor, a disappearing act caper
水蒸気の形で、消滅したように見せる悪戯
A wonder of the world, it's inexplicable by nature
世界の不思議、それは自然には説明できない

 

Everyday a different brick in the walls evaporated
毎日違う壁のレンガが蒸発していく
The first man to notice it was fascinated
最初にそれに気づいた男は魅了された
But then his heart palpitated, panic wriggled through the kingdom
だがその時、王の心臓は動悸し、王国にはパニックが蠢いた
The mystics start to sing, "this is what fate would bring the king"
神秘主義歌い始める "これは運命が王にもたらすもの"

 

The mystics didn't live long after that
その後神秘主義者は長生きしなかったが
Many inhabitants had left this haunted habitat
多くの住民がこの呪われた居住区を離れていった
And though the edifice was sick, the ruler wouldn't budge a lick
そして大建築は朽ちつつあったが、支配者は微動だにしなかった
Cause it was clear that he was clinging to his gravitas
己の厳粛さにしがみ付いてるのは明らかだったからだ

 


[Verse 3: Mr. Lif]
Months passed by, and one morning he opened his eye
月日流れ、ある朝、彼がを開けると
To see no ceiling in his chambers, just a view of the sky
寝室に天井はなく、ただが見えるだけ
The walls were gone, the shades were drawn inside his mind
壁は無くなり、影は彼の心の中に落ちた
But now he's got no choice but to view the other side of the blinds
だが今、彼はブラインド(盲目)の向かいを眺めるほかに無い

 

What he finds is a world without his reign, pure pain
目に映るのは彼の統治なき世界、澄みわたる苦痛
The mighty ruler walking with a cane
強大な支配者が杖をついて歩く
With miles of lush hills before him, and grass is their decorum
何マイルも青々と丘が広がり草が頭を垂れる
He screamed, "Why!?" 
彼は叫んだ "なぜ!?" 
and the skies did ignore him
そして空は彼を無視した

 

He asked once again, but the world had resigned
もういちど彼は問いかけたが、世界は放棄され
No signs. His time holding hands with time
形跡もなく、彼の命は時間と結びつき
With an eternity to breath and no chance to ever leave
逃れる術のない永遠の寿命をかかえ
He got lost in the mirage of his reprieve
彼は救済という幻想に迷い込んでいった

 

 


"Why"
"なぜ"

 

 

 

 

   →勝手にBonus Track "Phantom"